すずめの住む街。

「あなたの街にすずめはいますか?」

空から見た壁


咲「今日ね、色々な人が色々な想いをぶつけ合う劇を観てきた。」


和華「雑な説明。」


咲「上手く表現できないの。」


和華「それで?」


咲「難しいよね。自分と、自分以外の人のことを考えるのって。」







咲「天は将来何になりたいの?」


天「聞いてどうするのさ。」


咲「参考にする。」


天「参考?」


咲「天が普段何を考えて生きて、未来に何を見ているのかが気になる。」


天「何を考えて生きているかは自分でもよく分からないし、未来を見たって仕方ないじゃない。今を見ないと。」


咲「将来はこうなりたいとかないの?」


天「ないね。生きていられればそれでいいや。」


咲「ふーん。」


天「満足してない顔だね。」


咲「だって絶対に目標というか"こうなりたい!"みたいなものがあると思ったから。」


天「大切にしていることはあるよ。」


咲「大切?」


天「咲が言っていることって、僕にブレない何かがあるように見えるってことでしょ?」


咲「あー。そうかも。」


天「とにかく今を大切にする。自分も、自分の目の前にいる人も大切にする。自分は、いつまでも自分だから。他人にはなれないからさ。」


咲「...。」


天「どれだけ自分が嫌いでも、自分をやめることはできない。やめることができないなら、僕は自分をやめない。やめたら負けな気がするから。」


咲「自分をやめる...。」


天「僕は誰にも流されないし、流されるなら望んで好きなだけ流される。そこに理由があるとすれば、僕はただ、僕でいたいだけだよ。」


咲「生きていれば、僕でいられる。」


天「咲は咲らしく!なんて偉そうなことは言えないけど。一緒に今を生きようぜ!」


咲「なにそれ。生きてるよ、ほら。」


天「それだよ。それでいいんだよ。」


咲「なにそれ。分かんないなあ。」







咲「想いをぶつけ合うこと自体も難しいんだよね。」


和華「お互いの想いを分かち合うことも難しい。」


咲「冷静になれば、分からないことなんてすぐに分かるはずなのにね。」


和華「天ならなんて言う?」


咲「壁があるなら空を飛んでみなよって。」


和華「壁?」


咲「人と人との間に立つ壁。」


和華「...乗り越え方はいくらでもある。」


咲「乗り越えなくてもいい。」





咲「壁は僕を守ってくれる。」