要領のいい人
咲「なんとなくでいいんだよ。」
桃「なんとなくでいいの?」
咲「いいの。」
桃「うーん。それってどう?」
咲「どう?」
桃「なんとなくじゃいけないときない?正しい情報を知りたい時とか間違っちゃいけない時とか」
咲「うーん。」
桃「なんとなくじゃだめだよ。」
咲「なんとなく分かってればいいんじゃない?」
桃「なにを?」
咲「これは間違えちゃいけないこと。これは正しく情報を仕入れないといけないこと。それをなんとなく分かってればいいんじゃない?そしたらちゃんとする。」
桃「ちゃんとするって。」
咲「なんとなく生きてる人間にはこれくらいの表現しかできないよ。」
桃「それ。」
咲「僕はこれで成り立ってる。」
桃「だから和華としかいられないんだよ。」
咲「でも僕はそれで成り立ってる。」
桃「それもなんとなくでしょ。社会に出たらその価値観も変わるよ。」
咲「僕はちゃんと社会の中で生きてる。あ、なんとなく生きてる。生きられてる。違う?」
桃「なんとなくは生きてるかもね。」
咲「他人が他人の生き方に口を出せることはそうそうないことだよ。」
桃「怒られた?」
咲「怒ってない。」
桃「そう?」
咲「なんとなくって言葉、僕は好きだよ。」
桃「好き?」
咲「なんとなくは自分の軸。なんとなくに沿うことは自分の信念だったり価値観に近い。なんとなく違うことは自分の考え方とは違う。それが分かるだけで世界は広がる。」
桃「それ、それっぽく言うだけで中身なくない?」
咲「たくさんの言葉で説明しないと自分以外の考え方が分からない人もいる。僕はそうじゃないだけ。自分とは違う考え方をしている人に出会うだけでなんとなく成長するの。それだけ。」
桃「それって成長?」
咲「僕の中では。」
桃「相変わらずだね。」
咲「今日も僕はなんとなく成長してる。」
桃「そのなんとなくはいらない。」
咲「ばれた。」
桃「私は咲とは違うタイプかな。」
咲「それがなんとなく分かるだけで世界は変わるよ。」
桃「大げさ。」
咲「自分と同じ人なんていないから。自分を一番分かってあげるのはいつでも自分じゃなくちゃ。」
桃「なんとなくでも?」
咲「うん。」