すずめの住む街。

「あなたの街にすずめはいますか?」

スペシャル



和華「おはよー、、?」


咲がいない。

テーブルには紙。



【和華おはよう。】


この時代に手紙?


「今日の晩ご飯は

僕のスペシャルメニューです。

そのための買い物をしてきます。

ちゃんと朝ごはん食べてね。

いつもありがとう。

行ってきます。咲」



テレビでよく見るやつ。

置き手紙をするときは大体戻ってこない。

それより晩ご飯の準備をこんな朝からする?



和華「いただきます。」


いつもと変わらぬ朝ご飯。

いつもと変わらず食器を洗い、洗濯物を干し、掃除をする。

変わらぬ休日。


最近はずっと忙しくて、家のことができていなかった。


「咲に負担をかけ過ぎてしまったかな。」




和華「あ、メール。咲じゃん。」



咲からメール。写真。

いいお天気。綺麗な海。


海?



咲「見て。綺麗。」


和華「綺麗だね。どこにいるの?」


咲「今度2人で見に来ようね。」



質問に答えないのもいつもと変わらないから。


和華「うん。」



そう返してふと思う。


晩ご飯がスペシャルということは昼ご飯は僕ひとりな訳で。


外食でもするか。

最近駅の近くにできたカフェにでも行くか。



和華「日替わり季節のスパゲティでお願いします。」


1750円。

サラダとドリンクがついてくるらしい。


この町には、こうしてゆっくり出来るカフェがある。


映画館がある。図書館がある。

川もある。公園もある。

ひとりで過ごすには贅沢だ。




咲「おかえり。もうすぐ出来るから。」



おひとりさまを堪能した休日。

日が暮れる頃に家に戻る僕を、いつもと変わらず迎える咲。


和華「ただいま。」



いや、おかしくない?

おかしくないのか。



和華「おかえり。」


咲「ただいま。」


和華「新しくできたカフェに行ってきた。」


咲「おしゃれなところだよね。僕も気になってる。」


和華「今度2人で行こうね。」


咲「うん。」


和華「スペシャルメニューはなんだろう。」


咲「なんでしょう。」



いつもと変わらぬ晩ご飯。

いつもと変わらず普通で平和な時間。



咲「1日早いけど。お誕生日おめでとう。」


和華「ケーキだ。飾りつけ下手くそ。」


咲「難しかった。」



明日は出勤。

忙しいから。夜遅いから。



和華「咲。なんで手紙?」


咲「メールだと起こしちゃうかなって。スマホ握りしめて寝てたから。」




明日は出勤。

いつもと変わらぬ休日。